京都府立植物園さんの園芸日記
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エキウム・ウィルドプレッティー

2014/05/18
エキウム・ウィルドプレッティー 拡大 写真1 エキウム・ウィルドプレッティー 拡大 写真2 エキウム・ウィルドプレッティー 拡大 写真3

英名をTower of jewelsといい、訳して「宝石の塔」とも呼ばれるカナリー諸島原産の2年生植物です。
高林成年元園長が1980年コペンハーゲンの植物園から種子を譲り受け、当時の宿根草園担当の田中寛幸氏に栽培を託されました。1982年に初開花し、田中さんは試行錯誤の末、京都の戸外でできる栽培体系を確立されました。今では大きな花茎を伸ばし見事な花を咲かせ、5月の植物園の風物詩として定着しています。今年は温室前で43本、森カフェ前で44本すべての株が花をつけました。
コペンハーゲンの植物園はカナリー諸島の植物調査を実施し、エキウムの種子を採種し持ち帰ったところだったようで、そこにたまたま高林さんが訪れ種子が入手できたそうです。人の手に触れてないバージンな種子だったのです。この点は観賞面で差はないですが、植物園のコレクションを考える上では非常に重要なことです。2年生植物で6月に採種したタネを9月に播種し、温室内で育て、夏を越して秋に花壇に定植します。冬の低温と雨によって芯腐れが発生することがあり、秋までの栽培が悪かったり、冬に極端な低温に遭うと開花サイズにならず花茎が伸びてこないこともあります。エキウムは梅雨から夏にかけての高温多湿にも冬の低温多湿にも弱く、春に長大な花茎を伸ばすには冬の間じわじわと生長していることが必要です。京都の冬はこの植物にとって若干寒すぎて、雨も多すぎるように思います。ほんの少しでも寒風が防げる陽だまりが適しているのではないかと思い、建物の南側、具体的には大芝生地にある森のカフェ南側に花壇を作りエキウムを定植しました。作った花壇は1mほど掘り込んで排水のいい用土に替え、地表からも40㎝ぐらいかさ上げしたところ、手前味噌ですが、素晴らしい出来栄えになりました。
この結果から京都より冬の低温がマイルドで風が弱く、日照の多いところ、たとえば中部以西の太平洋沿いで作るともっとよくできると考えています。それともう一つ、夏の夜温が低ければ理想的ですね。エキウム属の植物は約40種類がヨーロッパ、アフリカ、西アジアに分布し、中でもカナリー諸島には青系の花をつけるカンディカンス、ピニナナやシンプレックスなど魅力的な種類植物があります。エキウムも含めてカナリー諸島とその隣のマデイラ諸島は面白そうですよ。これらの地域の植物は露地で作るには耐寒性が弱く、加温室では間延するし、開花に必要な低温も足りないなど中途半端で、魅力的ではあるけれど扱いにくいものが多いです。南アフリカの植物も同様でしょう。その中でこのエキウムは京都によく馴染んでくれたなと思うし、それを成し遂げた先輩職員の皆様の慧眼、技術にも脱帽です。

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