京都府立植物園さんの園芸日記

フラグミぺディウム・コバチー(2018.12.13)

2018/12/13
フラグミぺディウム・コバチー(2018.12.13) 拡大 写真1 フラグミぺディウム・コバチー(2018.12.13) 拡大 写真2 フラグミぺディウム・コバチー(2018.12.13) 拡大 写真3

 大きなランの花が咲いたというのでバックヤードへ行ってみました。間もなく観覧温室へ移されます。原産地ペルーでは数株が固まって分布しているらしい。横幅15センチにもなる紫色の大きな花をつけます(写真左)。いつものように、外花被片3枚、内花被片3枚(うち1枚が大きな唇弁に発達)、中央に蕊柱(ずいちゅう)を確認し終わると、ただこれだけの花の構成要素で、よくまあいろんな花になると、感心してしまいます。花も大きければ、中央にある蕊柱も大きい(写真中央)。袋状の大きな唇弁を中から覗くと、ふたつの黄色い筋が見えます(写真右)。これは何の意味があるのだろう?蜜腺?まさか。そもそもどんな昆虫が訪花するのだろう?
 学名はPhragmipedium kovachii。学名にあるコバチーの名前は、ミシェル・コバチという米国のランの採集家の名前です。彼はこの植物をペルーの道端で行商人から買い、生きたまま米国にこっそり運び、フロリダ州にあるマリー・セルビー植物園に持ち込んでいます。持ち込まれたマリー・セルビー植物園の関係者は、その植物をエリック・クリステンソンという人が新種としてランの専門誌に発表する予定であることをかぎつけます。そこで、植物園発行のジャーナルの補足版をすかさず発行し、そこで新種として2002年6月に発表してしまいました。同年7月に、エリック・クリステンソンが同じ植物を新種Phragmipedium peruvianumとして発表しましたが、ときすでに遅し、これは幻の種名になってしまいました。同じ種を別の名前で新種として発表された場合、1分でも1秒でも早く発表された種の名前が優先されるという国際命名規約があるためです。
 しかし、ちょっとずるくないですか?実際2006年にPhragmipedium kovachiiの名前は無効であると国際命名規約委員会に訴えられました。しかし委員会は訴えを退けました。もし違法に持ち込んだ植物についた学名や、ずるい方法で発表した学名を無効にすることになれば、命名規約が不安定なものになる、というのが理由です。分かるような、分からないような。

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みんなのコメント(1)

我が家の温室でも2019年8月30日に開花しました、9月6日現在NS18センチあります。18年の2月東京の世界らん展で苗を購入したものです。年中20度程度に室温を保ち毎日みずやりを行いました。

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