第5回 泰平の眠りを覚ますFdk(フレッドクラーケアラ) ― 今、熱い植物アーカイブ
「アメリカから新しいランが来る」。それも黒いランだという。この噂を聞き、日本のラン愛好家は、すわ黒船来襲かと色めき立った。新しいランの名は、交配でつくられた新しい属、フレッドクラーケアラ(以下Fdk)。
輪数の多さ、花のバリエーションの豊富さ、花もちのよさという、複数の系統(*)の長所だけを受け継いでいるというのだ。アフターダークと名づけられた種類は、名前どおりのまれに見る黒~暗赤色のダークな花色が目を引き、たちまち人気となった。
人気の花を人よりも立派に咲かせたい。園芸家ならばそうした欲も出ようというもの。清水柾孝さんもそうした欲を持つ一人だ。
日本有数の洋ラン愛好会である全日本蘭協会が、愛好家主催のラン展としては東日本最大級のラン展を毎年1月に行う。清水さんは2017年度のラン展において、Fdk・アフターダーク‘サンセット・バレー・オーキッド’で、最高賞を最年少となる26歳で受賞した。6本の花茎にバランスよく見事に花を咲かせた、その栽培技術が高い評価を獲得したのだ。
「Fdkの花をたくさん咲かせるためにまず必要なのは、株の充実です」
一般にランの仲間には、根を傷めないように肥料を控えめにするのがセオリー。清水さんもふだんは液体肥料での施肥を行うが、Fdkのようなランには有機質固形肥料を規定量の2倍施す場合があるという。
*Fdkは開花期前に葉を落とす落葉性のラン、クロウェシア、カタセタム、モルモデスの3つの属の交配でつくられた。
清水柾孝(しみず・まさたか)
ラン栽培家。こどものころに出会ったパフィオペディラムをきっかけにラン栽培を始め、26歳にしてすでにラン栽培歴18年。世界らん展ほか、受賞歴多数。
撮影/日岐百合子 編集/土屋 悟
『NHK趣味の園芸』テキスト大好評連載「今、熱い植物」アーカイブ
この記事は『趣味の園芸』2017年8月号「今、熱い植物」を編集、抜粋したものです。
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