第14回 サボテンの王…黒王丸(こくおうまる)コピアポア・シネレア― 今、熱い植物アーカイブ
青灰色を帯びた肌に、厳しいとげ。数多くのサボテンのなかでも、水際立った存在感をもつのがコピアポア・シネレア。国内では黒王丸の名で呼ばれることが多い。
「サボテンを育てている人の多くが、いつかは育ててみたい憧れのサボテンが、この黒王丸。海外でも人気で、とても需要があるにもかかわらず、手に入りにくいこともあって、世界的に品薄な状態。個体ごとに開花がずれてタネがとりにくいなど、実生でふやしにくいのも原因の一つです」
そう語るのは、大阪でサボテン・多肉植物の専門店を営む山城智洋さん。
「たとえ手に入っても、姿よく育てるのが本当に難しいサボテンです。現地の自然環境のなかで培われた、荒々しい姿に憧れて育てても、国内ではなかなかうまく再現できないんです」
黒王丸をはじめとするコピアポア属のサボテンが自生するのは南アメリカ大陸西部の国、チリ。コピアポア属はチリの南北およそ1200kmの地域に各種が自生しており、2010年に鉱山の落盤事故で世界的なニュースにもなったコピアポという町の名前が、属名の由来だ。
「コピアポア属の自生地は、年間を通じて昼夜の温度差が大きく、雨季でも雨がほとんど降らない乾燥地帯。霧がよく出るので、その水分を取り込みながらゆっくりと育つことで、本来の独特な風貌になります。雨よけをしたり環境をつくりつつ、いかに適切に水やりを控えるかが栽培のポイントです」
山城智洋(やましろ・ともひろ)
園芸研究家。花き・鉢花市場勤務を経て、大阪府豊中市で50年近く続く家業のサボテン・多肉植物店に携わる。
撮影/田中雅也 編集/土屋 悟 取材協力/山城愛仙園 撮影協力/村主康瑞、壇上和孝
『NHK趣味の園芸』テキスト大好評連載「今、熱い植物」アーカイブ
この記事は『趣味の園芸』2018年5月号「今、熱い植物」を編集、抜粋したものです。
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