第15回 繻子(しゅす)か宝石か…ジュエルオーキッド ― 今、熱い植物アーカイブ
最近、コケなどをガラス瓶に入れたテラリウムや、水槽の中で湿地や雨林の植生を再現したパルダリウムをつくる人がふえている。そうした育て方をする植物の一つとして人気なのがジュエルオーキッドだ。
オーキッドと名のつくことからもわかるようにランの一種で、日本に自生するシュスラン(*2)(繻子蘭)もこの仲間。シュスラン属(グッディエラ属)とそれに近縁なものの総称がジュエルオーキッドと呼ばれる。
多様な種類の花があるランのなかにあって、ジュエル、繻子(サテンなどの光沢のある布)と美しいものが名前に冠される理由は、美麗な葉にある。
「ビロードのような質感の葉は、同じ種類であっても個体ごとに微妙に違いがあり、見ていて飽きません」
そう語る早瀨新平さん。高校時代にジュエルオーキッドの魅力にとりつかれて以来、栽培を続けている。
「湿り気が好きな植物なので、コケなどと一緒にテラリウムに入れることもできます。しかし、風通しが悪いと長期間の株の維持は難しくなります」
湿り気を好むからと、ふたつきの容器で栽培するのは失敗のもと。
「地上部は風通しよく、しかし根は乾かないように、というのが、ジュエルオーキッド栽培に最適な環境。貴重な品種を長期間維持したい場合には、湿度のある環境で、風を当てて育てるのがおすすめです」
なので、ガラス器などに入れて育てる際も、ふたをしないで育てるのがよいそうだ。
「ジュエルオーキッドはとてもハダニがつきやすいです。ときどき、芽に水がたまらないように、株全体と葉裏に霧吹きをしましょう。また、半年に1回程度の頻度で、容器に水をためてから抜くと、根から出た老廃物が洗い流されて、生育がよくなります」
*1 雨林=年間降水量が多い地域でできる森林のこと。温帯~熱帯にあり、広義では霧に包まれることが多い雲霧林も含む。
*2 シュスラン=Goodyera velutina
早瀨新平(はやせ・しんぺい)
園芸家・アクアリスト。大阪府大阪市でアクアリウムや雨林植物を販売。10代のころからジュエルオーキッドに魅了され、栽培経験豊富。
撮影/田中雅也 編集/土屋 悟 撮影協力/Green note
『NHK趣味の園芸』テキスト大好評連載「今、熱い植物」アーカイブ
この記事は『趣味の園芸』2018年6月号「今、熱い植物」を編集、抜粋したものです。
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