今、熱い植物「ポストビカクシダを探せ」

ドリナリア・リギデュラ
ドリナリア・リギデュラ(Drynaria rigidula)「軽やかでみずみずしい葉も枯れたシールドも、またドリナリアの愉しみ。(長谷圭祐)」

第21回 ポストビカクシダを探せ…ドリナリア、フペルジア、エラフォグロッサム ― 今、熱い植物アーカイブ

ドリナリアをはじめとする魅力的な着生シダの数々

数年前に比べると、着生植物を目にする機会がふえている。最もよく見かけるものの一つが、ビカクシダだろう。板に着生させた株が、切れ込みが入った大きな葉を下垂させる姿は、鉢植えの植物と大きく異なり目を引く。

「シダの仲間には着生のものが多くあり、ビカクシダ以外にも魅力的な種類がたくさんあります」

そう語るのは、一番好きな植物はシダだという植物採集家の長谷圭祐さん。

ビカクシダは前面に出る胞子葉(および裸葉)と根を覆うように出る貯水葉の、形の異なる2種類の葉を出す(*1)。ほかにも、似たようなシダがあり、これもまた魅力的だという。

「ドリナリアの仲間は、シールド(盾)とも呼ばれる貯水葉に切れ込みがあったり、葉も細かく分かれていたりと、ビカクシダとはまた違った美しさがあります」

重厚な存在感があるビカクシダに対し、ドリナリアは葉の雰囲気も軽やか。

好みに合わせてどちらかを選ぶこともできるが、それぞれによさがあるので、どちらも選んでしまいたくなる。

「育てる環境はビカクシダ(プラティセリウム・ビフルカツム)と同じ(*2)。鉢でも板づけでも育てることができます」

ドリナリアがビカクシダと異なるのは、太い根茎を伸ばすこと。

「根茎が伸びた先で新しい葉が出るので、狙いどおりの株姿をつくるのは難しいです。しかし、そういう偶然性も、ドリナリアを育てることの楽しみの一つのような気がします」

*1 正確には裸葉、実葉(胞子葉)、貯水葉(外套葉)の3種類の葉がある。
*2 種類により、やや高温を好むものもある。

インテリアに向くフペルジア パルダリウムに合うシダも

このほかにもおすすめなのがフペルジア(*3)。

「フペルジアはパッと見サボテンの仲間のリプサリスのようにも見えますが、小葉類と呼ばれる原始的なグループに属する、下垂する姿が美しい着生シダ。いったん根が張ってしまえば、育てやすいシダです。株分けしたり根をいじったときは、根が張るまでは葉水などで保湿するとよいでしょう」

小型のシダではエラフォグロッサム・ペルタツムもおすすめ。

「草丈数cmの小さなシダです。こちらはやや乾燥に弱いので、テラリウムやパルダリウムなどのガラス器に入れた栽培に向きます。一つ一つの葉が樹木のような形をしているので、1本だけ分けて植えたくなるかもしれませんが、株分けの際には根でつながった数本をまとめたほうが根づきやすくなります。成長点(伸びている根茎の先端)をつけて分けるのもポイントです」

*3 フペルジアの一部は現在Phlegmariurus(コスギラン)属に分類されるものもあるが、国内ではフペルジアの名で流通することが多いので、ここではこの名で呼ぶ。

長谷圭祐

長谷圭祐(はせ・けいすけ)

植物採集家。大阪を拠点に、熱帯雨林の植物の栽培、採集を行う。「今、熱い植物」第4回 アグラオネマ第9回 アグラオネマにも登場。


フペルジア・ヌンムラリフォリア
フペルジア・ヌンムラリフォリア(Huperzia nummularifolia東南アジアに広く分布。種小名は「丸い葉」を意味する。その名のとおり、全体に小判形の葉がつく。
コノフィツム・スワネポエリアナム・ルブロリネアツム
エラフォグロッサム・ペルタツム(Elaphoglossum peltatum中南米原産。自生する地域によって葉の分かれ方が異なるなどバリエーションが豊富。

撮影/田中雅也、土屋 悟 編集/土屋 悟

『NHK趣味の園芸』テキスト大好評連載「今、熱い植物」アーカイブ
この記事は『趣味の園芸』2018年12月号「今、熱い植物」を編集、抜粋したものです。

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