アジサイに精通、川原田邦彦さんに聞く。<前編・おすすめのヤマアジサイ>『趣味の園芸』6月号こぼれ話
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
今回は、6月号のアジサイ特集で「アジサイの基本」「簡単すぎる! アジサイ栽培」を教えてくれた川原田邦彦さんが登場。庭木・宿根草の生産、販売を手がけ、アジサイにも造詣が深い川原田さんが、<おすすめのヤマアジサイ>について紹介してくれます。
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編集部(以下、編) 川原田さんは、昔からアジサイがお好きだったんですか?
川原田邦彦(以下、川) いやいや、もともとはアジサイにそれほど興味があったわけではないんです。それがあるとき、アジサイ研究家の山本武臣さんのところで、ヤマアジサイを目にする機会を得て。こんな美しい色合いのアジサイがあるのかと衝撃を受けたんです。
*ヤマアジサイ...本州、四国、九州の太平洋側などの山地の林床、谷間などに分布。ガクアジサイに比べ、葉は長めの楕円形で薄く、枝も細めで繊細な雰囲気がある。
編 そのとき見たのは、どんな品種だったのでしょう?
川 最初に見たのは、「八重甘茶(やえあまちゃ)」「七段花(しちだんか)」「舞妓(まいこ)」などですね。そこから、一気に夢中になりました。
編 ヤマアジサイが先生を魅了したんですね。では、とくにお好きな品種などありますか? もし良ければ、5つほど教えてください。
川 ひとつめ「深山八重紫(みやまやえむらさき)」です。花色は美しい青紫で丸弁(花弁の先が丸い)のとても感じの良い花ですね。ただ、あまり出回らない品種です。
「深山八重紫」(撮影:桜野良充)
京都府美山町の山林で発見された品種。八重咲き。
編 京都の山林で発見された品種なんですね。上品な花姿、一度見てみたいものです。
川 ふたつめは「桃色サワアジサイ」。しだれかかるような、やわらかな樹形が優雅で、土壌の成分や日当たりの影響を受けず、安定したきれいな桃色の花が楽しめます。
「桃色サワアジサイ」(撮影:伊藤善規)
小型で、風情がある。
編 ピンクの花がお好きな方には、花色が変わらないのは嬉しいポイントですね。
川 3つめは、3~4年ほど前に登場した新品種で「津江の緑澄(つえのりょくとう)」です。装飾花が緑で両性花がブルーと、新鮮な花色が魅力です。
「津江の緑澄」(撮影:川原田邦彦)
緑の花が咲く品種はほかにもいくつか知られるが、とくに美しい。
編 すごく、きれいな緑色ですね。
川 4つめは、「日向紅(ひゅうがべに)」。自生地では名前のとおり、きれいな赤い花になりますが、私のところで栽培すると群青色に。その花色もすばらしく美しいんです。
「日向紅」(撮影:桜野良充)
編 赤から青へ、美しい色の変化が楽しめるんですね。
川 最後が「紅の白雪(べにのしらゆき)」です。咲き始めは緑色だった葉が、花が咲きに進むにつれて純白に。日壁の庭も明るく照らしてくれます。
「紅の白雪」(撮影:川原田邦彦)
編 花だけでなく、葉色も変化するんですね。アジサイ、ほんとうに味わい深い花です。
後編は、「お好きなアジサイスポット」についてです!
撮影:成清徹也
川原田邦彦(かわらだ・くにひこ)
茨城県で庭木や宿根草などの生産、販売、造園などを幅広く手がける。植物全般に詳しく、特にアジサイに造詣が深い。わかりやすい解説にも定評がある。
「テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)
『趣味の園芸』2021年6月号(5/21発売)
「簡単すぎる! アジサイ栽培」では、開花鉢から育てる方法をご紹介。誰でもアジサイを元気に育てられる4つのコツを、川原田さんが教えてくれました。