原種シクラメン通! 荻原範雄さんに聞く。<後編・おすすめの原種シクラメン>趣味の園芸12月号こぼれ話
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
今回は、12月号シクラメン特集「手軽でかわいい推し原種 はじまりはコウムから」で、シクラメン・コウムについて教えてくれた荻原範雄さんが登場。人気連載「おぎはら植物園のナチュラルガーデン」でもおなじみです。
前編では、<コウムの楽しみ方>について伺いましたが、後編ではコウム以外にもまだまだあるという、荻原さんの<おすすめの原種シクラメン>について教えていただきました。
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編集部(以下、編) 本誌ではコウムのほかに、ヘデリフォリウム、インタミナタム、ミラビレを紹介しましたが。ほかにも、いろいろな原種シクラメンがあるんですよね。
荻原範雄(以下、荻) はい。まだまだ奥深い世界が待っています。ただ、それぞれ花期が異なり、それに合わせて育て方にも多少の違いがあるため。初めての方には少し難しく感じるかも。少しずつ知識を深めていくと、楽しめると思います。
編 そうですね。では、そのほかの荻原さんのおすすめを教えていただけますか。
荻 ひとつめは「シクラメン・グラエカム」、とても長生きのシクラメンとして知られ、20年ほどで球根の大きさが30cmほどにも。大きく育った球根から、たくさんの花を咲かせる姿はとても見ごとです。
(撮影/今井秀治)
シクラメン・グラエカム
【開花期/9~11月】【耐寒性/-10℃前後まで】【耐暑性/普通】【日照/やや半日陰】【草丈/5~15cm】【原産地/ギリシャ】
編 20年も! それはすごいですね。
荻 次はアフリカ産で暑さに強い「シクラメン・アフリカナム」です。可憐な花が咲き、香りが楽しめるタイプも。葉は大きめで肉厚な印象。耐寒性がないため、冬、温度が0度以下になる場合は防寒対策が必要です。そのぶん暑さには強く、完全に乾燥させれば夏越しも手軽にできます。
(撮影/荻原範雄)
シクラメン・アフリカナム
【開花期/9~11月】【耐寒性/0℃前後まで】【耐暑性/強い】【日照/やや半日陰】【草丈/10~20cm】【原産地/北アフリカ】
編 とても優雅な印象の花ですね。
荻 お次は、「シクラメン・シリシウム」。花色は淡いピンクから白まであり、すっきりとした薄めの花弁が特徴です。はちみつのような香りをもつ花もあります。
(撮影/荻原範雄)
シクラメン・シリシウム
【開花期/10~12月】【耐寒性/-6℃前後まで】【耐暑性/普通】【日照/やや半日陰】【草丈/5~15cm】【原産地/トルコ】
編 すごく、かわいらしいですね!
荻 花がきれいといえば、「シクラメン・シプリウム」もおすすめです。地中海のキプロス島特産の原種シクラメンで、白地に赤い点が入ったさわやかな花色が魅力です。夏は落葉し、休眠後に秋の開花を迎えます。
(撮影/荻原範雄)
シクラメン・シプリウム
【開花期/10~翌1月】【耐寒性/-3℃前後まで】【耐暑性/普通】【日照/やや半日陰】【草丈/5~15cm】【原産地/キプロス島】
編 どの花も風情がありますね。
荻 最後に紹介するのは「シクラメン・コンフューサム」です。以前はヘデリフォリウムの亜種とされていましたが、近年独立した種となりました。ヘデリフォリウムによく似ていますが、葉が厚く整っていて、がっしりとした草姿が楽しめます。
(撮影/荻原範雄)
シクラメン・コンフューサム
【開花期/10~12月】【耐寒性/-3℃前後まで】【耐暑性/普通】【日照/やや半日陰】【草丈/10~20cm】【原産地/クレタ島】
編 それぞれに個性と魅力が楽しめるんですね。原種シクラメン、ほんとうに奥が深いです!
<終わり>
前編はこちら!
荻原載雄(おぎはら・のりお)
長野県上田市で宿根草と山野草を扱う植物専門店を営み、全国の園芸ファンから支持されている。シクラメン・コウムはシーズンに先駆け初秋から店頭にそろえ、たちまち売り切れるほど人気。趣味の園芸テキスト2021年4月号より「おぎはら植物園のナチュルガーデン」連載中。
「テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)
『趣味の園芸』2021年12月号(11/20発売)
「育てるのが難しそう!」「希少で手が届かないのでは?」シクラメンの原種にそんなイメージをおもちの方もいるかも。それは、大きな誤解です。【手軽でかわいい推し原種 はじまりはコウムから(p.48~)】では、荻原さんがコウムの魅力と育て方をやさしく教えてくれます。