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アジサイの魅力を深掘り!庭木のプロフェッショナル・川原田邦彦さんに聞きました。【趣味の園芸6月号こぼれ話・後編】

アジサイの魅力を深掘り!庭木のプロフェッショナル・川原田邦彦さんに聞きました。【...

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」だけで読める連載「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。

 

6月号「1鉢置くならヤマアジサイ」で、日本古来のアジサイの魅力を教えてくれた川原田邦彦さん。茨城県で100年以上続く園芸場の四代目で、アジサイをはじめ多くの庭木や宿根草の生産・販売を手がける「植物の達人」です。

前編では、アジサイの不思議な歴史について教えていただきましたが、後編では川原田さんが「とくに好き」というヤマアジサイの研究秘話に迫ります。

 

誌面でも述べたように、川原田さんがアジサイの魅力にハマったのは、1980年代にアマチュアのアジサイ研究家・山本武臣さんが紹介したヤマアジサイがきっかけだといいます。

 

山本武臣さんは、50歳を超えてからアジサイの虜になり、その後の人生をアジサイの研究と収集に捧げた人です。今、アジサイがここまで人気の花となったのも、山本さんの尽力が大きいと思います。その功績はたくさんありますが、イギリスで人気の品種「ロゼア」のルーツを突き止めたことは、とくに画期的です。

 

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ロゼアの探求には、アジサイの花色の変化がカギに...(写真は別品種)。(撮影:田中雅也)

 

「ロゼア」は、イギリスの植物学者チャールズ・マリーズが、1879年(明治12年)に日本から本国へ持ち帰ったアジサイです。イギリスでは赤色の花が咲いたため、「バラ色」という意味の「ロゼア」と命名されました。交配親としてその後多くの育種に用いられた、重要な品種です。

 

この「ロゼア」が、日本の「ヒメアジサイ」であることを突き止めたのが、山本武臣さんなのです。

ヒメアジサイは、牧野富太郎博士が長野で発見し、1929年(昭和4年)発行の『植物研究雑誌』に発表した品種です。やや小ぶりで優美な姿から、博士によって命名されました。このヒメアジサイ、博士の庭にも植えられていたという記録が残っているものの、その後、存在が確認できなくなってしました。山本武臣さんは、この花の行方を探索し、牧野邸のヒメアジサイが高知県の牧野植物園に移植されていたことを突き止めます。

 

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牧野富太郎に命名された「ヒメアジサイ」。(撮影:伊藤善規)

 

さらに山本さんが、イギリスから「ロゼア」を取り寄せて栽培したところ、花色が青に変わり、これもヒメアジサイであることが判明したのです。つまり「ロゼア」は、イギリスのアルカリ性土壌で花色が赤くなっていただけで、日本の酸性土壌では、青い花を咲かせます。神奈川県鎌倉市の明月院を「あじさい寺」として有名にしたのも、このヒメアジサイ。「明月院ブルー」とも呼ばれ、美しい青花が人気です。

 

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ヒメアジサイは、日本では美しいブルーに発色することが多い。(撮影:田中雅也)

 

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日本で育つ「ロゼア」は、こんな花色にも。土壌の酸度によって色が変わる。

 

ちなみに、私の父・川原田林は、牧野富太郎博士の最後の弟子の一人で、自宅には博士から届いた直筆の年賀状があります。牧野博士は、来年の「連続テレビ小説」のモデルにもなる方ですので、ちょっとした自慢です(笑)。

 

山本武臣さんは、ほかにも数々のヤマアジサイを見いだし、楚々とした魅力を世に広めてくれました。私自身も、山本さんが紹介した品種でヤマアジサイを知り、「こんなアジサイは見たことない!」と驚いた一人です。それ以降、私もヤマアジサイの魅力にハマって研究や収集を重ね、今ではすっかり「アジサイ通」になってしまいました。

 

ヤマアジサイの品種は、一般的なアジサイの園芸品種と違って、人為的に交配して育種されたものはほとんどありません。野山の自生種が、自然実生で変異したものです。近年は、ヤマアジサイの人気が上昇し、次々と新しい品種が発表されています。それを見るのは楽しいのですが、一方で「あれ、どこが違うのだろう?」と戸惑うようなものがあるのも事実です。人気にあやかって品種を乱発することは、混乱にもつながるので、よく考えなければならない問題だと感じています。

 

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アジサイの咲く季節が到来。(撮影:田中雅也)

 

アジサイが咲くこれからの季節は、あちこちで美しい花が見られて、心が弾みます。私の園芸場のモットーは「心から『花が美しい』と想う人は、自分で『花を咲かせたことがある』人である」というものです。アジサイに限らず、バラでもハナミズキでもツバキでもいいんです。皆さんもぜひ、何か1本、花の咲く木を育ててみてください。

 

木はいいですよ。ゆっくりと着実に大きくなり、人生をともに歩む相棒になってくれます。それに最近は「SDGs」とか「脱炭素」とかで環境問題が着目されていますが、樹木は光合成で二酸化炭素を吸収してくれる頼もしい存在です。試算では、1人の人間が呼吸によって排出する1年分の二酸化炭素を吸収するには、およそ23本の樹木が必要なのだそうです(スギで換算した場合)。一家に1本じゃ足りませんね、どんどん植えないと(笑)。

また、庭に3mの木を3本植えると、自動車1台が毎日6分アイドリングストップするのと同じ二酸化炭素の削減効果がある、という話も聞いたことがあります。レジ袋の有料化より、効果があるんじゃないかと感じますね。

 

私も、皆さんに喜んでいただけるような庭木を提供できるよう、日々精進していきます。今も、新しいアジサイの育種を進めているところです。見たこともないような色で、香りが......おっと、これ以上は内緒(笑)。数年後、皆さんにお披露目できるようにがんばるので、楽しみに待っていてくださいね!

 

〈終わり〉

 

前編はこちら!

 

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川原田 邦彦(かわらだ・くにひこ)

茨城県牛久市で庭木や宿根草などの生産、販売、造園などを手がける「確実園園芸場」を経営。名前のとおり「お客様のところで枯れない、確実なもの」を販売するのがモットー。2万平米の園内には、5000品種もの植物が育つ。アジサイに造詣が深いが、フジの収集もライフワーク。日本植木協会会員。

(撮影:田中雅也)

 

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テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)

 

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日本各地に自生しているヤマアジイ。楚々とした風情で、人気が高まっています。日本原産であるため、育てやすいことも魅力です。川原田邦彦さんが、おすすめ品種や楽しみ方を教えてくれました。

 

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6月号の内容はこちら >

 

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