オサダ式多肉栽培術 超チャレンジ編〈じつは簡単?多肉植物のタネまき〉趣味の園芸9月号こぼれ話【前編】
ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」で読める「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。
今回は、9月号の多肉植物特集で、栽培方法をビギナーにもわかりやすく教えてくれた長田研さんが登場。テキストでは多肉植物をタネから育てる楽しさも紹介してくれました。こぼれ話では、さまざまな多肉植物をタネから育ててきた長田さんに、タネまきの方法やその後の管理のコツを伺います。
前編は、タネまきの方法についてお聞きしました!
長田 研(以下、長):この2つの株を見てください。株のサイズや葉の大きさ、さらには葉の色も違いますが、どちらもタネから育てて4年ほどのアデニウム・アラビクムです。
テキストp.49にも掲載(撮影:安部まゆみ)
編集部(以下、編):はっきりと違いがわかりますね。
長:このように個体差が出るのが、タネから多肉植物を育てる楽しさの1つです。テキストで紹介したさし木や葉ざし(p.47~48参照)は植物のクローンをふやす方法です。ふやした株は元の株と同じ遺伝子をもつ個体なので、写真のような個体差は出ません。
編:面白そうですが、タネをまいて育てるのは難しいイメージがあります。
長:最近はタネまきに挑戦している方も多いですよ。タネをとりやすいハオルチアやエケベリアなどの愛好家には、オリジナル品種の作出に挑戦している方もいるみたいです。じつはタネをまいて発芽させるまではそれほど難しくありません。
編:そうなんですか! タネまきの方法を教えてください。
長:ちょうどアガベ 笹の雪(ささのゆき)のタネがあります。まいてみましょう。
〈左〉アガベ 笹の雪(撮影:田中雅也)、〈右〉アガベ 笹の雪のタネ(撮影:安部まゆみ)
長:タネをまく前に必要な準備は2つです。
1つは、もし白いシイナが混ざっていたら、取り除くこと。シイナには発芽能力がないので、まいても無意味です。もう1つは、土を水でしっかりと湿らせておくこと。タネをまいてから水やりすると、タネが浮いて流れてしまいます。
準備ができたら、湿った土にタネをまきます。市販のタネまき用土などにばらまきでOKです。
土を湿らせ、タネをばらまき。(撮影:安部まゆみ)
編:1つのポットに何粒ぐらいまきますか。
長:3号ポットに20粒ぐらいが目安です。タネをまいたら、タネが見えなくなるぐらいに薄く覆土をします。細粒赤玉土がよいですが、草花用培養土などでも問題ありません。
薄く覆土する。タネが見えなくなる程度でOK。(撮影:安部まゆみ)
タネをまいた日付と品種名をラベルに書いて、さしておきましょう。忘れがちですが大切です。
ラベルを忘れずに。(撮影:安部まゆみ)
編:多肉植物には主に3つの生育型(テキストp.40参照)がありますが、それぞれいつごろにタネをまくのがよいですか。
長:春秋型と夏型は春、冬型は秋にまくのがベストです。
編:なるほど、生育期や生育期に向かっていく時期がよいのですね。タネをまいたら、どう管理すればよいですか。
長:発芽までの管理をメモにまとめてみました。
【長田メモ】
◆置き場
・室内や軒下の日陰など、雨が当たらない場所に。
◆水やり
・発芽するまでは腰水で、乾燥しないように管理。
・乾燥を防ぐために、ラップなどで鉢を密閉してもよい。
・発芽し始めたらしばらくは霧吹きで水やり。
種類によって、もちろん例外もありますが、タネまきの方法と発芽までの管理は基本的にどの多肉植物も同じです。
編:意外と一般的な草花とそれほど変わらないのですね。
長:そうですね。タネまきから発芽まではそれほど難しくありません。一般の方が難しいのは、タネとりと発芽後しばらくの管理だと思います。
編:タネをとるのはなぜ難しいのでしょうか。
長:テキストでも紹介したユーフォルビア・オベサ(p.49参照)のように、雌雄異株(しゆういしゅ*)で最低でも2株は育てないとタネをとれなかったり、花を咲かせる体力がつくまで数年間かかったりする種類も多いからです。
*雌雄異株/雌花(雌しべだけをもつ花)と雄花(雄しべだけをもつ花)が同じ株につかず、どちらかしかつけることができない植物。
ユーフォルビア・オベサ(撮影:田中雅也)
タネはインターネットなどで購入することもできます。ただ、大手の種苗会社が販売している草花のタネなどとは違い、品質にはかなりばらつきがあるので、信頼できる販売店かよく見極めて購入するのがよいです。
編:インターネットでも買えるのですね。
長:発芽後の管理は、私が実生株を管理しているハウスを案内しながら解説します。
後編に続く!
長田 研(おさだ・けん)
園芸研究家/アメリカ・バージニア大学で生物と化学を専攻。静岡県で多肉植物を中心としたナーセリーを営む。タネまきのほとんどを自ら手がけている。
(撮影:阿部まゆみ)
「テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)
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