トピック&ニュースグリーンライフに役立つ最新トピック&ニュースをお届け!

レモン栽培の新常識?!<鉢植えレモンの、いいところ>趣味の園芸11月号こぼれ話 【前編】

レモン栽培の新常識?!<鉢植えレモンの、いいところ>趣味の園芸11月号こぼれ話 【前編】

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」で読める「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。

 

11月号「2つのワザで実つきをよくする! 鉢植えレモン」の記事で、レモンの鉢植え栽培について教えてくれた、東海大学農学部特任講師の安田喜一(やすだ・きいち)さん。こぼれ話前編では、初心者にもおすすめの鉢植えレモンについて、さらに詳しくお話を伺いました。

 

編集部(以下、編):本誌では、鉢植えレモンについて教えていただきました。栽培するなかで、植え替えなどはいつ、どのように行えばよいのでしょうか?

 

安田(以下、安):じつは、植え替えは頻繁には行わなくていいのです。

 

:え! そうなんですか? どんなに手入れが少ない植物でも、植え替えだけは必須、というイメージがありましたが......。

 

安:「実つきをよくする」という観点で考えると、積極的に行う必要はないのです。テキストで説明したように、樹勢が旺盛なレモンは、1~2年ごとの植え替えで根鉢を崩してしまうと、新根が多く発生し、必要以上に樹勢が強くなり、実つきにとっては逆効果になることもあります。根を制限することで「早く子孫を残さねば」と、樹勢よりも結実を優先するようになるのです。

 

:なんと......! でも、樹勢を弱くすると株そのものが弱ってしまわないでしょうか。

 

安:植え替え不要といいましたが、あくまでも順調に生育している場合ですね。株が弱っているサインが出ているときは、植え替えをして根鉢崩しや根切りをしてあげましょう。

 

:ええと......例えばどういったサインが出るのでしょうか。

 

安:まず主要なものとして押さえておきたいのは、次の3つです。

・適正な施肥を行っても葉っぱの色が悪い(暖かいのに薄い色・まだら色など)

・枝の先端が広く枯れる、新梢の発生が少なすぎる

・培養土がまったく水を吸わずに湛水(たんすい)してしまう

このような場合には、植え替え時に根を切って、株を回復させてください。

 

:なるほど! 日ごろの管理のなかで見つけられそうなサインですね。

 

安:あとは大きい鉢やお気に入りの鉢に変えたいときなどももちろん植え替えますが、そうでなければ無理に行わなくともOKです。ちなみに、庭植えの場合でも、あまり大きくなりすぎるのが心配でしたら、大きめの鉢ごと土壌に埋め込むのもありです。果樹はある程度土壌の条件が悪くても育ちがよく、想定以上に大きくなってしまって管理に困ってしまう......なんてこともご経験があると思います。是非お試しください。

 

:「庭植えできないから鉢植えにする」のではなく、鉢植えだからこそのメリットがあるんですね。

 

202211kobore1_02.jpg

順調に生育している鉢植えレモンは、植え替えをサボってOK。(撮影:田中雅也)

 

樹勢を抑えるといえば、本誌でも、枝を下向きに引っ張る「曲げワザ」を教えていただきましたが、このワザはレモン以外の植物でも使えるのでしょうか?

 

安:もちろん使えます。ウンシュウミカンは、レモンに比べて枝が直立気味になりにくく、樹勢をコントロールせずともそこまで大きくならない品種もありますが、例えばブンタン(ザボン)は勢いがいい樹種ですし、樹勢が落ち着かないことで有名なユズはぐんぐん上に伸びていくので、「曲げワザ」はとても効果的です。

 

編:確かに、ユズの誘引はよく耳にします。

 

安:柑橘類に限らず、モモやスモモなどの落葉樹にも使えるテクニックなんですよ。生産現場でも、この曲げワザと同様の考え方で、もともと立木で栽培されていたナシ、カキ、モモ、スモモなども、最近ではつる性のブドウやキウイフルーツのように「棚仕立て」にして枝を上に延ばさない方法がが主流となってきています。果樹全般の基本的な考え方といえるでしょう。

 

編:大変勉強になりました。先生ご自身も、いろいろな果樹を育てていらっしゃるのでしょうか。

 

安:ベランダでさまざま育てています。自慢のひと鉢は、ブドウの'巨峰'ですね。鉢植え栽培としては、われながらかなりの出来栄えなのではと思います。

 

202211kobore1_03.jpg

趣味としては非の打ちどころない巨峰。(撮影:安田喜一)

 

編:すごい。自宅でここまで美しいブドウができるんですね......!

 

安:あと、今回のテキストでは、初心者の方にも向けて鉢植えレモンをご紹介しましたが、じつはもう一つビギナーにおすすめのおもしろい果樹があるんです。

 

編:ぜひお聞きしたいです!

安:ヒントは「熱帯果樹」です。後編でお話ししますので、お楽しみに!

次回、安田先生のベランダ栽培について詳しくお聞きしていきます。

 

後編に続く!

 

202211kobore1_pro.jpg

安田喜一(やすだ・きいち)

専門は果樹園芸学。柑橘類の研究に従事。博士号(農学)を取得後、福岡県庁で果樹の普及指導員として生産者を指導。自宅アパートのベランダでʻ巨峰ʼやパッションフルーツ、キンカンなどの果樹を栽培し、息子と収穫を楽しんでいる。

 

こぼれ話sp.jpg

テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)

 

『趣味の園芸』2022年11月号(10/21発売)

202211e_34-35.jpg

おしゃれな雰囲気で人気のレモン。スライスしてドリンクやスイーツに入れたり、果汁を肉や魚料理にかけたり、果実1つだけでいろいろ味わえるのが魅力。苗木選びや植えつけ、実つきをよくするワザなど、鉢植えで気軽に育てる方法を安田さんが紹介します。

 

202211e_01.jpg

テキスト『趣味の園芸』2022年11月号

 

NHK出版で購入する | Amazonで購入する

関連する植物の情報

レモン

会員登録がお済みの方は

会員登録をすると、園芸日記、そだレポ、アルバム、コミュニティ、マイページなどのサービスを無料でご利用いただくことができます。

ピックアップ
定期購読
投稿募集中 from テキスト編集部
見て見て!お気に入りの花

見て見て!お気に入りの花
自慢の植物・庭の写真を募集中!

みんなのマルシェ

みんなのマルシェ
自慢の畑・野菜の写真を募集中!