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シクラメンの魅力を深掘り!生産者さんの事情に詳しい塩見亮一さんに聞きました。【趣味の園芸12月号こぼれ話・前編】

シクラメンの魅力を深掘り!生産者さんの事情に詳しい塩見亮一さんに聞きました。【趣味の園芸12月号こぼれ話・前編】

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」で読める「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。

 

12月号「進化するシクラメン」で、全国の栽培農家さんが丹精こめて生み出した、最新品種の魅力を教えてくれた塩見亮一さん。ここではさらに、誌面では語り尽くせなかった「シクラメンの育種」秘話を伺いました。

 

* * *

 

日本各地を飛び回り、多くの栽培農家さんと懇意で、最新情報から育種の裏話まで鉢花のあれこれを熟知している塩見さん。全国に支店のある大手花き販売店にお勤めなので、仕入れを担当されているのかと思いきや......。

 

「いえ、仕入れ担当ではないんです。栽培農家さんを巡るのは、会社の指令ではなく自発的に行っています。仕入れ担当者でも、花き市場に行くのが通常業務で、農家さんの現場を訪れる機会はなかなかありません。私の場合は『もっと勉強したいから』『仕事につなげますから』と上司を説得して、全国の農家さんを回らせてもらっています」

 

「というのも、私は小さいころから植物が大好きな『園芸少年』でした。小学生のとき、祖父母が育てていたウラシマソウを見て『なんだ、この不思議な形態の植物は!?』と衝撃を受けたのがきっかけです。でも、園芸や植物が好きということは、友人にはひた隠しにしていました。今とは違って『男の子は男の子らしく』という時代だったので、笑われたり冷やかされたりするんじゃないかと(笑)。大学も植物とは無縁の文学部です。しかし、就職活動をする段になって『一生働くなら、好きなことを仕事にしたい』と、思いきってこの業界に飛び込みました。小学校1年生から『趣味の園芸』を毎号熟読していましたし、『植物の知識はけっこうあるはず』と密かに自信があったのですが、就職して配属されたのは、ブライダル装花。自身の山野草と庭木の知識は、まったく役に立ちませんでした(笑)。こうして自信を打ち砕かれて『イチから勉強しなくては』と、思いを新たにしてがんばってきた、というわけです」

 

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塩見少年が衝撃を受けた、ウラシマソウ。ヘビのような草姿にびっくり!

(撮影/丸山滋)

 

生産農家は全国各地に点在しているため「鉄道より自動車のほうが融通がきくから」と、勤務地の大阪から遠方の農家まで自らの運転で行ってしまう、あまりにも勉強熱心な塩見さん。休日の息抜きも、園芸店巡り。あふれる植物愛に圧倒されます!

 

「どのような鉢花がどれくらいの価格で売られているのか、市場調査も大切なんですが、変わった花を見つけたら、品種ラベルに書いてある生産者さんの名前をチェックして『訪問したい生産農家さんリスト』をつくっています。というのも、新しい花の誕生を目指して育種をしている生産農家さんは、全国でもごく少数なんです」

 

「花の栽培は、とても過酷な仕事です。休みがなく朝も早く、天候に左右されて。そんななか、皆さん『よい苗を届けたい』と日々励んでおられますが、生産者を大きく分けると3タイプあります。1つめは『種苗会社からタネや苗を購入して、普及種の大量生産を目指す』スタイル。生産者さんの多くがこのタイプです。お客様に手ごろな価格で均一な苗をお届けできるのは、この方たちのお陰。コロナ禍以降、自宅で草花を育てる人がふえていますが、このブームを支えているのも、大量生産できる農家さんたちです」

 

「2つめは、普及種の苗の生産を行いつつ、さらに『育てやすさ』や『丈夫さ』を追求するタイプ。たとえば、福岡県のシクラメン生産者さんのなかには、夏に元気な株を選抜して、夏越ししやすい株の育種を進めている方がいらっしゃいます。暑さが厳しいという、本来なら不利な栽培環境を逆手にとって『よりよい苗を』と、挑戦を続けているんです。園芸初心者の皆さんにも育てやすい植物がふえたのは、この方たちの地道な積み重ねのお陰です」

 

「そして3つめが、花色や花形にこだわり『まだ見たことのない新しい花』を追求するタイプ。意外かもしれませんが、花き生産者のなかで、このタイプはごく少数です。なぜなら、ものすごく手間がかかるうえに、よい結果が出るかは未知数ですし、さらに結果が出るまでに10~20年という単位で時間がかかるから。仕事というより『趣味』ですね(笑)。そして『趣味』では食べていけないので、本業は、前述のような普及種の苗の生産をされて、その傍らで日夜、新品種の開発に心血を注いでいるんです。『花が好きで好きでたまらない!』という方々ですが、新しい花の誕生には、ただ『好き』だけでは続けられない、気の遠くなるような手間がかかっています」

 

全国でも少数派の「新しい花」の誕生に情熱をかける生産者さん。気の遠くなるような手間とは、いったい......? 後編に続きます。

 

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12月号で塩見さんが紹介してくれたシクラメンたち〈36ページ参照〉

 

後編はこちら!

 

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塩見亮一(しおみ・りょういち)

花き商品販売会社勤務。花き商品の販売や企画を担当。生産者から直接話を聞くために、全国各地の栽培農家を巡る。つくり手の想いを消費者に伝える橋渡し役を心がけている。

 

(撮影/田中雅也)

 

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テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)

 

『趣味の園芸』2022年12月号(11/21発売)

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彩りの少ない冬に、花色も花形もバリエーション豊かなシクラメン。赤、白、紫、ピンクに黄色。八重咲き、ベル咲き、フリンジ咲き。12月号では生産者のこだわりと愛情が詰まったシクラメンの自信作を、塩見さんが厳選。進化するシクラメンを紹介します。

 

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テキスト『趣味の園芸』2022年12月号

 

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