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2人の育種家に聞く、クリスマスローズ育種のあれこれ〈後編・吉田園芸~多弁化のルーツと新たな花~〉趣味の園芸2月号こぼれ話

2人の育種家に聞く、クリスマスローズ育種のあれこれ〈後編・吉田園芸~多弁化のルー...

ウェブサイト「みんなの趣味の園芸」で読める「テキストこぼれ話」。『趣味の園芸』テキストの特集内容に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をお届けします。

 

今回は、2月号特集内の「クリスマスローズ大図鑑」で撮影にご協力いただいた広瀬園芸・広瀬利彦さんと吉田園芸・吉田順一さんが登場。数々の名花を生み出してきたお二人から伺った、育種にまつわる秘話をご紹介します。

 

後編は、吉田園芸・吉田順一さんです。

〈前編・広瀬園芸~マニアが唸る花と新しい色~〉はこちら >

 

ダブルを超えた多弁花、初めは......

 

吉田順一(以下、吉):2000年ごろ、ダブルのクリスマスローズが日本でも手に入るようになって、人気が高まっていました。それから20年余りたって、今ではダブルよりもさらに花弁が多い多弁、超多弁といわれるような花を多くの育種家が作出しています。

 

編集部(以下、編):テキストの講師・野々口稔さんから「吉田さんはかなり早くから多弁花の育種に取り組んでいた」と伺いました。

 

吉:うちにはじめてダブルよりも花弁の枚数が多い花が出てきたのも、たしか20年ほど前でした。はじめに現れた花ではありませんが、このような花でした。

 

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初期の多弁花に近い花。2008年撮影。(写真提供:吉田順一)

 

編:きれいですね。

 

吉:これは形を整えたものですから(笑)。最初に見つけたときは、ダブルの花2つが手違いでくっついてしまったような、奇妙な花でした。

 

編:「帯化(たいか)*」というやつですね。

*帯化...成長点に異常をきたし、複数本の茎が一本の太い茎にまとまるなど、変わった形態になる現象。帯化する性質は遺伝することが知られている。

 

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帯化して二つの花が合わさったガーベラの花。(撮影:牧 稔人)

 

吉:草丈が高く、花が大きすぎて花首も垂れてしまって、輸送しづらかったので、ここからタネをとってまいてを数世代くり返して、弁数を安定させたり、形を整えたりしていきました。

色はさっきの写真のようなオフホワイトのみで、販売もしてみましたが、なかなか買ってもらえませんでした。多弁花なんて当時はほとんど売ってなかったのに(笑)。それから、花色をふやす交配に取り掛かりました。

そして多弁花をいろいろなナーセリーがつくるようになった今は、花形のバリエーションをふやすべく、育種を行っています。

 

編:テキストP34-35の多弁花は、そのように生まれたのですね。

 

多弁花に変わり種セミダブル。吉田園芸の新しい花!

 

編:誌面には掲載されていないものにも、まだまだおもしろい花があるそう。ぜひ見せてください!

 

吉:まずは多弁花です。

 

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剣弁で中小輪系の花。明るい花色で元気な印象。

 

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中央の花弁が細かいのが特徴。スポット模様もポイント。

 

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シャクヤクの手まり咲きのような花形。色合いもキュート。

(写真提供:吉田順一)

 

吉:続いて、ちょっと変わったセミダブルです。

 

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(写真提供:吉田園芸)

 

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(写真撮影:桜野良充)

 

編:テキストにもいくつかセミダブルを掲載しましたが、それとは少し様子が違うような......。

 

吉:「ヒデコートセミダブル」という名称になるかと思います。「ヒデコート」というのはイギリスの地名です。ヒデコートで花弁の後ろにある苞葉(ほうよう)という部分が花弁のようになっている変わった花が見つかって、「ヒデコートダブル」と呼ばれています。ヒデコートダブルから、さらに蜜腺という器官を小花弁化させたのが「ヒデコートセミダブル」です。ちょっとわかりづらいかもしれません(笑)。

ヒデコートダブル自体が少ないこともあり、ヒデコートセミダブルで世に出ているものはまだほとんどないと思います。

 

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ヒデコートダブル。中央部のしべの根元にぎっしりとついているのが蜜腺。

 

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葉脈が赤く色づいた苞葉。これが花弁のように見えるのが「ヒデコートダブル」。

(写真撮影:桜野良充)

 

吉:日本は育種が盛んで、次々と新しい花が生まれています。そのなかで、独自性を失わないように、多弁花やヒデコートセミダブル、それに「ピエラ」の新シリーズなど、さまざまな軸をもって育種をしています。

 

編:これからもクリスマスローズから目が離せません!興味深いお話をありがとうございました!

 

<終わり>

 

前編はこちら!

 

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吉田順一(よしだ・じゅんいち)

育種家/岩手県・吉田園芸でクリスマスローズの育種・生産を行う。緑色の縁取りが特徴的なシリーズ「ピエラ」やさまざまな形状の多弁花で知られる。講師の野々口稔さんや前編に登場した広瀬利彦さんと、一緒にクリスマスローズの自生地巡りに行くことも。

 

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「今年はどんな花が現れるのか」毎年シーズンを心待ちにする野々口稔さんと、今年は広瀬園芸、吉田園芸を訪ねます。世界的にも有名な両ナーセリーで出会った、"新しいクリスマスローズ"をご紹介します。

 

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『趣味の園芸』2023年2月号

 

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テキストこぼれ話」では、『趣味の園芸』テキストの特集に関連して、担当編集者による講師へのインタビューなどをウェブ限定で公開しています(毎月2回更新予定)

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