トピック&ニュースグリーンライフに役立つ最新トピック&ニュースをお届け!

園芸でリラックス! 「自然セラピー」を実生活に生かすには?【趣味の園芸4月号こぼれ話・後編】

園芸でリラックス! 「自然セラピー」を実生活に生かすには?【趣味の園芸4月号こぼれ話・後編】
写真(右)/shutterstock

『趣味の園芸』2024年4月号の特集内「植物が身体を整える 『自然』で『自然に』リラックス」では、千葉大学の池井晴美先生に、自然と身体の関係について教えていただきました。ウェブだけで読める「こぼれ話」では、池井さんにさらに詳しくお話を伺います。

前編では「森林セラピー」について具体的にお聞きしました。後編では、池井さんが実施する研究の将来展望についてお話しいただきます。

 

――ご研究テーマの「自然セラピー」を通して将来実現したいことはなんでしょうか。

 

前編でも申し上げたとおり、「自然が人を癒やす」ことは、経験的には知られているのですが、人の身体にもたらす生理的データは、少し前まで存在しなかったのです。そんななか、実験を重ねてデータを蓄積してきました。ある程度のデータがたまりつつあり、今後の「自然セラピー」の展望としては、「医療費の削減」への貢献を目指しています。

これまでの実験では、基本的に健常な方を対象にしていたのですが、脊髄損傷者、高齢リハビリ患者、依存症やうつ病患者などの日常的に高いストレス状態にある方を対象とした研究に力を入れ始めています。

たとえば、脊髄損傷者と高齢リハビリ患者を対象として、「ヒノキ盆栽」を見てもらう実験を行いました。その際、自分が盆栽の中にいると思って味わってもらいました。そうすると、もともと強いストレス状態にある方々だったこともあり、とても大きなリラックス効果が認められたのです。

 

202404kobore2_shutterstock_1309692076.jpg

 

――誌面ではバラの実験結果をご紹介いただきましたが、それよりも効果が大きかったと言えるのでしょうか。

 

高校生、オフィスワーカー、医療従事者らの健常な方を対象としたバラの実験と比べて、とても大きな効果が得られました。これは、バラよりも盆栽のほうがより大きなリラックス効果が得られるという意味ではなく、対象とした方の属性の違いによるものと思います。前編でもご紹介しましたが、私たちの身体は、自然に触れたとき、本来の「人としてのあるべき状態」に近づくと考えています。脊髄損傷者や高齢リハビリ患者は、日常的にストレス状態が高いため、健常な方と比べて、自然に触れたとき、より大きな効果が得られるのです。

 

――そもそもの疑問なのですが、盆栽にせよバラにせよ「植物を見る」という方法は、ほかのまったく違うストレス解消法と比べて、どの程度有効なのでしょうか。

 

よくいただく疑問です。自然セラピー以外でも、一般的なリラックス法として知られている瞑想やマインドフルネスによっても、ストレス改善効果は得られるでしょう。しかし、自然セラピーにおいては、人の身体が「自然対応用」にできているというアドバンテージを持っています。自分の好みのリラックス法を選ぶことはもちろん大切なのですが、本誌でもご紹介したように、自然セラピーにおいては「自然」によって「自然に」リラックスしてしまうという利点があるのです。

 

――4月は園芸をはじめるのにぴったりの季節でもありますし、何か身近に一つ植物を置いてみよう、という方もいるのではないかと思います。自然セラピーの効果を得るためには、具体的にはどのようなものがおすすめなのでしょうか?

 

いろいろなデータを蓄積してきたのですが、結論からいうと、自分の好きな自然を取り入れるのが最も効果的です。「自分が感じること」と「身体の生理的な変化」は、多くの場合、一致することが明らかになっています。実際に自分が見たり、さわったり、においをかいだりして直感的に気に入った自然を取り入れてみるというのが基本です。

身近には、公園や庭などの大きな自然から、ベランダや鉢植え、生け花などの小さな自然まで、たくさんの自然があります。自分の直感を信じて、植物との暮らしを楽しんでいただければと思います。

 

202404kobore2_shutterstock_2157193425.jpg


<終わり>

 

画像はすべてイメージです(写真/shutterstock)

 

▼前編から読む!

 

202404kobore1_ikei.jpg

池井晴美(いけい・はるみ)

千葉大学国際高等研究基幹 テニュアトラック准教授(2024年4月より)。環境健康フィールド科学センター兼務。博士(農学)。専門は自然セラピー学。自然がもたらす生理的リラックス効果の解明を目的とし、自律神経活動や脳活動等の生理指標を用いた科学的データの蓄積を進めている。

(写真提供/池井晴美)

 

『趣味の園芸』2024年4月号

 

202404e_01.jpg

『趣味の園芸』2024年4月号

春の園芸スタート号! 庭・ベランダ・室内、場所別に、はじめ方、管理のコツ、園芸ライフの楽しみ方など盛りだくさんの内容でお届けします。宿根草ガーデン、インドア栽培、つるバラほか、新たな連載も始まります。2024年度の「グリーンサムへの12か月」は乙葉さんが登場。抽選で172名様に当たる、愛読者スペシャルプレゼントも!

NHK出版で購入する | Amazonで購入する

 

●ウェブ限定! 趣味の園芸テキストこぼれ話

engeikobore_sp.jpg

『趣味の園芸』編集部によるテキストこぼれ話。最新号の特集や記事に関連して、誌面で紹介しきれなかった情報をウェブ限定でお届けします。

 

会員登録がお済みの方は

会員登録をすると、園芸日記、そだレポ、アルバム、コミュニティ、マイページなどのサービスを無料でご利用いただくことができます。

ピックアップ
定期購読
投稿募集中 from テキスト編集部
見て見て!お気に入りの花

見て見て!お気に入りの花
自慢の植物・庭の写真を募集中!

みんなのマルシェ

みんなのマルシェ
自慢の畑・野菜の写真を募集中!