sakaki_Sさんの園芸日記

ミニバラの結実、夏の花苗、遺伝のおはなし

2024/05/30
ミニバラの結実、夏の花苗、遺伝のおはなし 拡大 写真1 ミニバラの結実、夏の花苗、遺伝のおはなし 拡大 写真2 ミニバラの結実、夏の花苗、遺伝のおはなし 拡大 写真3

種まきのジニアは軌道に乗ったようで、葉が増えてきました。ダリアも同様で、花芽を待つばかりです。バラの実は膨らみはじめ、夏の球根は、ようやく芽を出してきました。おまけに、ケニギン(HT)のステムからは初めて見る花芽が。

【ミニバラの結実】
いよいよ丸く、ふくらんで来ました。テディベアは園芸店にあった時からローズヒップを付けていた(おつとめ品)ので、真っ先に丸くなっています。秋には紅くなり、採種できそう。
しかし実は、丸くなったからといって安心出来ないのが恐ろしいところ。ローズヒップ(果実)が形成されたとしても、健康な種子が成熟しているとは限らないのです。
要因は様々ですが、そのひとつに「自家不和合性」があります。ざっくり言うと、自家受粉では種子形成が不完全で、発芽しない物です。バラにもそのような性質の個体があり、それは先駆者から情報を得るか、試してみるまで分かりません。ケニギンやヘナの性質が知りたくて自家受粉していますが、果たして……。(遺伝に関するメモは最下部に)

【ジニア「チェリーバイカラー」】
定番のプロフュージョンですが、昨年は苗を買って失敗しています。夏にほとんど咲かず、秋しか楽しめなかったのです。害虫も多かった。
今年は種まきし、十分なサイズになった所で庭へ降ろします。この環境に慣れて育てば、少しは夏に咲いてくれるはず。

【木立バラの花芽増加】
今まで、ステムを残して花芽を待ったことは、ほぼありません。5枚葉の上で剪定していたからです。ところが、ローズヒップの為に残したステム、苞葉(1枚葉)や3枚葉の付け根から、つぼみが上がっています。花は当然小さくなるでしょうが、にぎやかしに成ってくれるはず。種子形成への影響は危惧するほども無いと思うので、咲かせてみます。


交配も種まきも、引き続きのんびりやっていきます。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
以下はメモです。

<遺伝に関するおはなし>
素人な私のメモを読むより、きちんとした資料を読んだ方が良いので、興味があればこちらをどうぞ。

▼遺伝の法則(遺伝学電子博物館より)
https://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textbook/genetics.htm
PDF版→ https://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/pdf/genetics.pdf
▼自家受粉と先熟について
https://www1.ous.ac.jp/garden/hada/ecologicaldic/s/selfpollination/selfpollination.htm

以下、長いです。
私の世代では、およそ20年以上前に学んだであろうメンデル先生の法則は、時に機能しないことがあります。資料には「非メンデル遺伝」とか、非メンデル型とあります。ここでは私自身のために復習しますので、特に説明不要な場合でもどうぞご容赦を。

素人の私が植物を交配するにあたって、まずメンデル型の遺伝を考えるのは仕方のない事です。当たり前のように「優性遺伝」「劣性遺伝」という認識がありますから。
しかしそう簡単に遺伝は語れないようで、表現型(花色や樹形などの遺伝形質)は必ずしも独立した個々の要因によって決定されるものでは無いようです。
形質は、とある遺伝子をもつ染色体の組み合わせによって子に伝わり、表現されます。この時もしも、「色を左右する遺伝子」と「香りを左右する遺伝子」が、同じ染色体に乗っていたら? と考えてみます。
この2つの形質「色」と「香り」は、基本的にこの親から伝わる限りにおいて、別々に表現されにくい。セットだからです。これは交配目的によっては、有利にも不利にも見えます。

ところが、減数分裂後に母親由来の染色分体と父親由来の染色分体は交差して、染色体の一部が「乗り換え」られます。それによって遺伝子は「組み換え」られ、親とは異なる配列になります。こうなると、「色」と「香り」は、別々に子へ伝わります。
つまり私の感覚に落とすと、「強香品種同士を掛け合わせたからといって、強香の子が出るとは限らない」ということ。これではもう、不利も有利もありません。運です。とはいえ組み換えの頻度問題と、遺伝子の優劣関係は別々に考えてよいはず。毎回同じ組み換えが起きるわけでは無いからです。遺伝子の組み換え頻度は、遺伝子間の距離に比例します。距離が長いほど組み換え頻度は高くなり、距離が短いほど組み換え頻度は低くなります。ちなみに組み換え価の計算がテストに出た気もしますが、もう空覚えですので置いておきます。
※資料→DNAの組換え https://www.nig.ac.jp/museum/genetic03.html

なお、遺伝子組み換えを過剰に恐れる向きがありますが、実際には自然に組み換えは発生するものです。ただ、ここではこれ以上深堀りしません。

話を戻して……。
親(F1)の自家受粉による子への遺伝は、ざっくり考えると優性(顕性)75%、劣性(潜性)25% と見るのが基本です。
よって仮に、出現した子株がほとんど白色で強香だったとすれば、親株は「白色」と「強香」を顕性な形質としてもっていると認識できます。また、祖父母のどちらか(あるいは両方)が、「強香」や「白色」を顕性として持っていることが分かります。
ここまでは当たり前ですね。

それにも関わらず、もし親株が「オレンジ色」で「強香」のバラだったならば……親株は、潜性な形質「オレンジ色」と顕性な性質「強香」を持っていると言えます。つまり、この親株を「オレンジ色」を出すための親とするのは得策ではないかも知れないと判明するのです。(潜性だから)

これは恐ろしいことです。仮に「オレンジ色」で「強香」の花が欲しいとしますね。そしてこの親株においてオレンジ色は「潜性遺伝形質」です。この場合「オレンジ色だから交配親にしよう」という判断が、むしろ交配目的の達成を困難にしているわけです。それを知らずに、いつか目的の色が出ると信じてずっと交配しても、時間や労力のロスが増える一方です。無論、それでも交配するしかない場合はありますし、それを根気強くなされてきたのが歴代の哲人たちです。
そして、だからこそ、親や祖父母の性質をよく調べて、必要ならば親を思い切って変える選択もありなのでしょう。極端なことを言えば、オレンジ色の花が欲しいから「紅色」のバラを親にする、という選択が正解な場合もあるということですよね(この理解であってるよね?と、内心不安です)。

というか、そもそも。
バラの「オレンジ色」を出す因子は、どのような形質に乗ってくるのか? 中間色(遺伝的産生物量差)なのか? という疑問に答えを出さなければ始まりません。
なお、この話を覆すと「オレンジ色は欲しいが香りを優先する」交配目的においては有用です。強香のため交配親としつつ、オレンジ色の因子を持っていてもらう事が出来るからです(子で発現しなくても孫、戻し交配などに懸ける場合)。

中間色の話に寄せて
また一方では、親の自家受粉によって、子が赤色25%ピンク色50%白色25% などという結果を叩き出すことがあります。先ほど述べた「中間色」のことです。
こういう株は、祖父母の表現型を半分ずつ現している個体ですが、これは表現型と遺伝による産生物質の量とが関係している場合です。関係しているだけまだマシですが。
言い換えると、直接的に「色を決める」遺伝子ではないが、間接的に「色を左右するバラの体質を決める」遺伝子を受け継いでおり、その産生物量が変化したということ。≪いや、それって「色を決める遺伝子」じゃん!≫ という声が聞こえますね。私もそう思います(幻聴)
そしてこれこそ、非メンデル型の遺伝です。感覚的には理解できる内容です(赤+白=ピンクという単純さだから)。が、その「色を左右する体質」が何なのかを、特定するのは困難でしょう。さらに、

・どちらの親に顕性として宿っているのか?
・それとも潜性なのか?
・どのような割合で変化するのか?
など、地道に交配していく以外に特定するすべは無いような気がします。

さらにさらに、顕性遺伝はなぜ顕性なのか? について。特定の遺伝子が他の遺伝子の働きを抑制することが分かったそうです。なんということでしょう。余計なことをしてくれましたね!
バラの育種家は、よく「今までに無い美しい(新しい)形質というのは大抵が、潜性遺伝だ」という話をします。中でも「香りを求めると花もちや色が劣る」「色を求めると香りが劣る」「花持ちを求めると香りは劣る」などの話は、複数の育種家から聴こえてくる話です。これらは対立的遺伝子なのでしょうね。

順調にこんがらがって来ましたでしょうか。安心してください、私も混乱しています。
これが一般的な動物のように性別(植物にも雌雄異株あり)があり、「伴性遺伝」が関わってくるようなら……確実に挫折します。難しすぎる。
それでも少しずつ理解していきたい内容です。時々こんなふうに、復習のために書きながら考えたいと思います。

思いっきり雑に説明すると、
両親の良いとこ取りをした品種を生み出すにはまず、どっちのどんな性質が「顕性(優性)」なのかを知る必要がある。そして、それでも遺伝は顕性・潜性だけで語れないイレギュラーを引き起こすため、組み換えによる変化を見逃さない観察が必要だということです。(表現型に現れない配列の変化は、私には観察不可。よって分母の増量と世代が必要になる)
つまり「そんなの当たり前じゃない!!」という事を、長々と書いただけです。大変申し訳ありません。
こんな文章をここまでお読みくださったあなたは育種や遺伝に興味があるか、慈愛に満ちた園芸仙人です。ありがとうございました。

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