Leon. Bechtoldさんの園芸日記

単一植栽の怖さと、流行廃り

2024/08/06
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私が子供の頃、埼玉県や千葉県にはまだまだ里山があり、ヤマユリなんかいっくらでも咲いていました。林の中を走り回ればナンテンハギやツリガネニンジン、良く探せば、ジイソブ、バアソブまでありました。

その後、あれよあれよと言うままに、日本中どこに行っても道路はアスファルト舗装になっていて、気が付くと、昔駆け回った里山は、高級住宅街に大変貌。ヤマユリどころか、キツネノカミソリすらなくなっていました。そのころ、文化住宅の生垣は、カイヅカイブキが大流行。その後、ナシ農家がさび病の中間宿主になるカイズカイブキを大バッシング、流れとして、徐々にベニカナメモチに置き換わってきました。

‘レッド・ロビン’の生い立ち

新芽が萌えて美しい姿を楽しんでから刈り込むようにします。年間に何回かは刈り込む事になります。強剪定に耐える樹ですが、数年放置するとあれあれと言う間に5m とか育ってしまいます。その場合、春に大量の白い花を付けます。

セイヨウカナメモチ ‘レッド・ロビン’
(通称:ベニカナメモチ ‘レッド・ロビン’)
フォティニア・× フラセリ ‘レッド・ロビン’
バラ科 (APG IV) / カナメモチ属
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交配式 = カナメモチ × オオカナメモチ の交配に依り交配し選抜された園芸品種
= Photinia glabra × Photinia serratifolia
: Photinia glabra (Thunb.) Jacob-Makoy, 1868
: Photinia serratifolia (Desf.) Kalkman, 1973
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Photinia × fraseri  ‘Red Robin’ は、カナメモチとオオカナメモチの交配種で、ニュージーランドで作出された園芸品種です。この品種は、1940年頃にアメリカのアラバマ州のフレイザー農園で発見され、1955年に Photinia × fraseri  ‘Birmingham’  として市場に出されましたが、後に  ‘Birmingham’  は  ‘Red Robin’  に改名されました。新芽が鮮やかに赤くなり、刈り込みにも強いため、生垣として人気があります。当時は病虫害の少なさもウリの一つでした。

と、良いことずくめの様に最初皆が思い、全国的に植栽されていったのですが、単一植物のクローンを広大な土地にそれだけを植えると、必ず疫病が流行りだすのです。

現在、アフリカで、パラゴムノキ (トウダイグサ科 / パラゴムノキ属) Hevea brasiliensis (Willd. ex A.Juss.) Müll.Arg., 1865 の一大プランーションの地域は、かつて、高品質なコーヒーの大産地であった。(農学部時代の教授談) ところが、ある時疫病に1本が罹患して、地平線のかなたまでクローン株で埋め尽くされていたものが、たった2か月でその有名な銘柄のコーヒーの産地は壊滅してしまった。異なる品種が混ざっていればこのような事は無かったのだが、当時は、品質にしか眼を向けていなかったことから、この悲劇を招いた。

そのアフリカのコーヒーの大産地は方向転換して、世界の工業化に向けて、先のパラゴムの大産地に変わったという話を伺い、やはり単一系統だけではダメなんだなと重く受け止めたのを覚えている。

パラゴムの原産地のブラジルでは、タネの持ち出し自体を禁じていたにも関わらず、イギリスは国外にこっそりタネを持ち出し、自国の植民地に植えさせたものが現在まで至っている。

所が原産地のパラゴムはと言うと、原産地の南米では子嚢菌による南アメリカ葉枯病([South American Leaf Blight] 子嚢菌 = Pseudocercospora ulei (Henn.) B.T. Hora et Mizubuti, 2013)という病気のためあまり栽培されておらず、今なお天然の自生樹木からのゴム液採取が行われているありさまになってしまった。

要するに、単一作物ばかりを育てると碌な事にならないと言う結果が過去の歴史が物語っている。現在は、ベニカナメモチは病気が流行りだすと、じわじわと周囲に罹患し、殺菌剤の効果も芳しくない。刈り込み、強剪定に耐性があり、造園家にとっては便利な樹種であったが、最近では、トキワマンサク (Loropetalum chinense (R. Brown) Oliver, 1862) にその場を明け渡す勢いで減少してきているがこれも時代の流れなのだろうか。

其れからすると、アベリアは凄い植物だと思う。どんなに虐待されても萌芽してきて、花が冬以外は常に咲いて格好いいスズメガの仲間たちが蜜をすいにきたりしている。

ある意味現在最強の造園樹種はアベリアなのかもしれない。

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みんなのコメント(11)

写真は、初期のデジタル一眼レフ、Canon EOS Kiss (APS-C / 600万画素機) + KIT Zoom Lens

で撮りました。物凄く古いデジカメですが、流石撮像素子が大きいのでスマホ画像とは一味違う絵になりました。レンズ付きで3000円でした(笑)

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こんばんは。
いや~面白いですね!
過去日記読み始めたら恐らく時間がいくらあっても足りないので時間がある時にします。大阪にはツリガネニンジンやキツネノカミソリが自生している箇所がまだ数か所あります。

我家にも植栽としてアベリアが居ます。切らないと大きさがあまり大きくならなかったのですが私が園芸をかじって剪定を始めてから矮性種と思っていたのにどんどん大きくなってきました。ちなみに植栽は私が園芸を始める10年前からあったのですが10年間は大きさは全く変わらなかったです。オタフクナンテンも剪定したがためにどでかくなってしまいました。触らぬ神に何とやらです。

植栽で家の年代が大体わかりますよね。私の家にはシンボルツリーでシマトネリコがあるのですが今のお家はほぼやらないですよね。

伺いたいのですがアベリアは一般的にスイカズラ科なのですがイワツクバネウツギ(ザベリア属)も含めリンネソウ科とするサイトがあります。これにはどういった経緯があるのかご存知でしたらお知らせください。

私の日記では命名者と年代は割愛してます。タイピングが遅いので・・・年代は植物に付いては不可欠ではないですよね。命名者を省いている私が言うのもなんですが
イタリック体にした方が良いと思いますよ(笑)

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ともたん0128さん、こんにちは、はじめまして。

なかなか興味深いことを書かれておられるのですね。私はスミレは好きなのですが、疎くて、友人にドマニアがいるので、スミレに関しては聞いてしまうことが多いです。セリ科、キク科、シダ類、コケ類は全て不得意なので、各分野のエキスパートに聞いてしまいます。その方が早いからです。逆にこちらからデータを差し上げるのも多いのでおあいこなんです。

カラスビシャクの下りは楽しいですね。私は、紫ハンゲを探しています。赤茶色花のオオハンゲは友達からもらったものが勝手に増えてくれていて毎年楽しみにしています。


ところで、御存じだとは思いますが、巷では新エングラー分類体系、クロンキスト分類体系、遺伝子塩基配列を参考に分類したAPG分類体系が有ると思います。

私は、クロンキスト分類体系は最初から鑑みていないです。図鑑などの書籍は新エングラー分類体系ですし、学界では、APG IV 分類体系で話が進むので、クロンキストは端から無視しています。本音で言うと、遺伝子塩基配列を参考に分類したAPG分類体系ですら、最終的には多数決的な忖度で決定されていることが多々あるので、なんとも言えませんが、自身の中に一本筋を通しています。

The Harvard University が提示している、Index Kewensis を念頭に置いています。何か基準を作っておかないと、あやふやになってしまうのが個人的な好みに合わない為です。これらの中で解決できないものは、The Flora of China などを基準にしたりもします。

御存じの様に、学名の国際ルールは、属名 + 種小名 で一つの文になり、それは(公的な場合) イタリック体にするのが国際ルールなのは承知しております。ですが、趣味の園芸のサイトでイタリック体に(私は)できないのでその点は、ルール違反です。

命名者名と学術発表年代を併記するのは、言い換えると私の趣味です。学名は常に新しいものが正しい訳ではなくて、差戻しをされることも多々あります、其の為にも、誰が名付けた物か、その年代は何時か、と言うことにはこだわりを持っているので(趣味の範囲ですが)これらを併記し、その学名の信憑性を標示する様にしています。

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イワツクバネウツギに関しての経緯(いきさつ)に関しては今は追えなかったのですが、趣味で作成しているデータシートがあり、それを転記いたします。


イワツクバネウツギ
スイカズラ科 (APG IV) / イワツクバネウツギ属
ザベリア・インテグリフォリア
Zabelia integrifolia (Koidz.) Makino ex Ikuse et S.Kuros., 1954
First published in J. Jap. Bot. 29: 110 (1954)
This species is accepted.
Confirmation Date: 08/07, 2024.
--------------------------------------
Family: Caprifoliaceae (APG IV)
--------------------------------------
Authors:
Gen'ichi Koidzumi (1883-1953)
Tomitarô Makino (1862-1957)
Kiyotaka Hisauti (1884-1981)
Hiroshi Hara (1911-1986)
------------------
Ascribed Authors:
Tomitarô Makino (1862-1957)
--------------------------------------
Publication:
Journal of Japanese Botany. [Shokubutsu Kenkyu Zasshi]. Tokyo
------------------
Collation:
29(4): 110
------------------
Date of Publication:
Apr 1954
------------------
Annotation:
see also Hisauchi & Hara in Journ. Jap. Bot. 29: 144 (1954).
--------------------------------------
The native range of this species is S. Korea, Central & S. Japan. It is a shrub and grows primarily in the temperate biome.
--------------------------------------
Distribution Native to:
Japan, Korea
--------------------------------------
Basionym:
Abelia integrifolia Koidz. in Bot. Mag. (Tokyo) 29: 312 (1915)
--------------------------------------
Homotypic Synonym:
Abelia integrifolia Koidz. in Bot. Mag. (Tokyo) 29: 312 (1915)
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Publications:
------------------
POWO follows these authorities in accepting this name:
Govaerts, R., Nic Lughadha, E., Black, N., Turner, R. & Paton, A. (2021). The World Checklist of Vascular Plants, a continuously updated resource for exploring global plant diversity. https://doi.org/10.1038/s41597-021-00997-6. Scientific Data 8: 215.
Iwatsuki, K., Yamazaki, T., Boufford, D.E. & Ohba, H. (eds.) (1993). Flora of Japan IIIa: 1-482. Kodansha Ltd., Tokyo.
------------------
Publications used to compile the distribution and map:
Chang, C.S., Kim, H. & Chang, K.S. (2014). Provisional checklist of vascular plants for the Korea peninsula flora (KPF): 1-660. DESIGNPOST.
Iwatsuki, K., Yamazaki, T., Boufford, D.E. & Ohba, H. (eds.) (1993). Flora of Japan IIIa: 1-482. Kodansha Ltd., Tokyo.
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Leon. Bechtoldさん

日記をいつでも見れるようにお気ににしました。突拍子もない所にコメントが飛んでくると思うのでお待ちください。

学名が差し戻されることがあると言う事を初めて知りました。ありがとうございます。

あと私が気になっているのはススキノキ科、ツルボラン科、ワスレグサ科で「ヘメロカリスは現在どれが主流なのか?」が気になります。インターネットで検索するとススキノキ科が少ないですがツルボラン科とワスレグサ科が同じくらい出てくるように感じます。ユリ科ではないことは当然のごとくですが。

どれが主流かは「賛同している人がどれだけ多いか。」という事に依存するのは分かりました。私の性格上「どっちつかず」と言うのが嫌なのでそれを知りたいだけです。

「ヘメロカリスがアロエの仲間やねんで!」と皆に吹聴していたのにそんなに近くなかったとすれば訂正を吹聴して回らなければならないのでよろしくお願いします。

それにしてもこの膨大な情報ありがとうございます。読んでると瞼が重くなってきます(;^ω^)

私は園芸を趣味とした翌年の2019年からすみれをメインとして扱っているのですが性格上デリケートなすみれは栽培できないことが分かり今は放っておいても爆殖するシロコスミレと外来種問題で取りざたされているアメリカスミレサイシンことビオラ・ソロリアを大量に飼育してます。勝手に生えてきます。開花期が幾分ずれているので自然交配は稀です。アリアケシロコスミレなど数の多いすみれとかかったことはあります。昔はすみれは捨てる事が出来なかったのですが最近はよその鉢に生えたものは抜きまくってます。抜かないと主が駆逐されてしまいます。今までフランネルフラワーをヒメスミレにセントランサスをスミレに枯らされました。ほかにもありましたがわすれちゃいました。スミレの同定は個体差やその個体差を人間が「違う」と言って別種にしているものなどがあるので難しいです。まぁすみれに限った事では無いですけども。ちなみに我が家からソロリアが逸出しているのっは見たことないですがトウワタが逃げ出してるのはチラホラ見かけるようになってきました。よその家の中なので抜くに抜けないんです。私が庭に植えてからよそで確認できるようになったので間違いなくウチのトウワタの親類だと思います。

趣味園の日記でイタリック体を出すときは半角の<op:i></op:i>で斜体にしたい文字をくくる(中ほどの>と<の間に文字を入れ込む)と出来ますよ。ちなみにボールドはiをbに入れ替えればできます。
編集画面の下の方に文字を変えたい場合と言うリンクがあると思います。

Leon. Bechtoldさんと同じように長い文章を書きがちですがよろしくお願いします。

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ともたん0128さん、こんにちは。



ススキノキ科、ツルボラン科、ワスレグサ科 関係の事。
遺伝子塩基配列を利用した植物分類方法、APG 分類方法は、4年に一度見直しをされ、アップデートしています。
以下は既存の、APG II や APG III からアップデートされた APG IV の事です。

キジカクシ目 Asparagales

ラン科 Orchidaceae

ボリア科 Boryaceae

ブランドフォルディア科 Blandfordiaceae

アステリア科 Asteliaceae

ラナリア科 Lanariaceae

キンバイザサ科 Hypoxidaceae

ドリアンテス科 Doryanthaceae

イキシオリリオン科 Ixioliriaceae (='Ixiolirionaceae')

テコフィレア科 Tecophilaeaceae

アヤメ科 Iridaceae

キセロネマ科 Xeronemataceae

ツルボラン科 Asphodelaceae
これは、APG IIIではツルボラン科(APG II) 、キスゲ科(APG II) を統合してススキノキ科(APG III) とされたが、Asphodelaceae が保存名になったのにあわせて、APG IVからは、APG III でススキノキ科だったものから ツルボラン科 Asphodelaceae (APG IV) に変更された。APG II のデータは過去のものです。

ヒガンバナ科 Amaryllidaceae APG III より、アガパンサス科、ネギ科を含む

キジカクシ科 Asparagaceae APG III より、リュウゼツラン科、アフィランテス科、ヘスペロカリス科、ヒアシンス科、ラクスマンニア科、スズラン科、テミス科を統合


以上です。

子供の頃に感じたとおりになり案外こんなものだろうなと思います。


趣味園にて、イタリック体にするテクには驚きです。webサイトでのソースの書き方と異なるので驚きました。
どうもありがとうございます。

うーむ、何が悪いのでしょうか。イタリック体にならないです。

ユウスゲ 別名:キスゲ
Family: Asphodelaceae (APG IV)
<op:i>Hemerocallis citrina</op:i> Baroni var. <op:i>vespertina</op:i> (H.Hara) M.Hotta, 1966

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すみません。コメントしていたのを忘れていました。

</:>が全角になってます。半角にしてください。
きっとイタリックになります。

貴重な情報ありがとうございました。

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<op:i>Hemerocallis citrina</op:i> Baroni var. <op:i> vespertina</op:i> (H.Hara) M.Hotta, 1966

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< > ・・・半角にしたのですが、また、失敗しました。難しいですね。

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