春を待ち望む~連載「イーサゴの庭仕事」第11回(2023年2月号)
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北国から毎月お届けするテキスト連載「岩手の四季をつむぐ イーサゴの庭仕事」。
岩手県花巻市内に位置するイーサゴ ナーセリー&ガーデン。早池峰山(はやちねさん)を望むのどかな田園風景の中、営むのは、及川洋磨さん・真由美さんご夫妻。自作のクレマチスや、寒冷地向きの植物とともに、北国の厳しくも美しいナチュラルガーデンの1年をお送りします。
2月号掲載、第11回の内容をご紹介!
第11回「春を待ち望む」
剪定と誘引をしながら、春の開花に思いを巡らせる
外は氷点下の雪景色で、まだまだ寒さ真っただ中の2月。けれど、日ざしがある日は温室内の温度が10℃を超えることもあり、春の気配をひと足先に感じた植物は少しずつ動き始めます。それにつれ、我々の春に向けての作業も本格化していきます。
イーサゴには、室内のディスプレイ用として、大小さまざまなクレマチスの鉢植えが100鉢以上あります。この時期は、鉢の状態を一つ一つ確認して、ひたすら剪定と誘引を行います。とはいえ、系統や品種に応じて、細かくやり方を変えるわけではありません。むしろ気にせず、観察するポイントを押さえたうえで大胆に行います。この方法だと、知識や経験の差に関係なく、スタッフの誰でも行うことができます。
具体的なやり方としては、まず初めに落葉している、もしくは葉が茶色くなっている枝を上から下まで観察します。すると、必ずどこかに丸くふくらんだ芽があります。その芽はこれから新しい枝として伸び、その先に花を咲かせるので、大切に残します。次に、芽がない部分の枯れ枝を切り、残した枝は支柱に留めて終了です。支柱は市販の園芸用ではなく、庭の樹木の剪定枝を利用してナチュラルに仕上げるのがイーサゴ流です。
(「洋磨さんのガーデン便り」より)
雪の中のハウスで、トップシーズンに向け仕込みを行う
長い冬が続き、外は雪で覆われていますが、2月中旬を過ぎると日ざしに少しずつ力強さが戻り、ハウス内の土が凍らなくなります。このころをねらって、クレマチスの鉢植えを2年に1回、半数ずつ植え替えます。これ以上の期間放っておくと根詰まりを起こし、花が小さくなったり咲きにくくなったり、乾きが異常に早くなったりと、生育不良になりやすいからです。
たくさんあるクレマチスの鉢植えは、それぞれていねいに土を落とし、肥料を混ぜた新しい土で植え直します。一番数の多い直径40cmほどの大きな鉢に植えたクレマチスは同じサイズ、それより小さな鉢は鉢増しするのが基本。少し乾き気味のときに作業をするのと、底の部分を棒でつついて少しずつ根をくずすのがポイントです。パラパラと土が落ちるにつれ、クレマチスならではの太い根があらわになります。調子がよかった株はよく育って量も多く、納得の充実具合。逆に生育がいまひとつだった株は、根の量が少なく頼りない根株をしています。植え替えは一見地味な作業に見えますが、1株ごとに生育具合と根の状態との答え合わせをしているよう。地植えでは知りえない土の中の状態を見られる、園芸の醍醐味のような作業だと思っています。
(「真由美さんの庭仕事便り」より)
テキストで、ガーデンの美しい風景をたっぷりとお楽しみください。
★この号に掲載されています
園芸研究家 及川洋磨(おいかわ・ようま)
及川フラグリーンにてクレマチスの新品種の開発と苗の生産に従事。クレマチスの魅力と可能性を発信するためイーサゴ ナーセリー&ガーデンを立ち上げ、ナーセリーを担当。
ランドスケープデザイナー 及川真由美(おいかわ・まゆみ)
ランドスケープ設計事務所所での勤務を経て、及川フラグリーンへ。以来、圃場内の庭の計画と手入れの実務を担当している。イーサゴ ナーセリー&ガーデンではガーデンを担当。
※ショップおよびガーデンは期間限定でのオープンとなります。詳しくはHPをご覧ください。
★テキスト連載「イーサゴの庭仕事」
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