分類僻極まれり!品種ごとにジャムをつくって食べ比べ。比べてわかったジャムにおすすめの3品種【私の植物偏愛記・7月号こぼれ話】
おなじみの講師の方々に、愛する植物を思う存分語っていただく連載「私の植物偏愛記」。『趣味の園芸』7月号では、花木を中心に植物全般に造詣の深い倉重祐二さんに、観葉植物への愛を語っていただきました。
「集めて、分類すること」が昔から好きだったという倉重さん。そんな倉重さんの性格がよく表れているのが、一時期凝っていたというジャムづくり。イチゴやイチジクなど、さまざまな果物を、品種ごとにジャムにして食べ比べていたそうです。
ウェブだけで読めるこの「こぼれ話」では、倉重さんが実際に食べ比べてたどり着いたジャムにおすすめの果物3品種を紹介します! スーパーで果物を購入するとき、新たに苗を購入するときに、ぜひご参考になさってください。
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新潟で暮らしていたころは、季節ごとの果物を手に入れやすい環境でした。例えば、同じイチジクでも、いろいろな品種の果実を入手できたので、品種ごとにジャムにして食べ比べていた時期があります。
品種によっても、産地や年によっても、味や香りが変わります。生で食べておいしいものは、ジャムにしてもおいしいです。実際に食べ比べて、「これはうまい!」と思った3品種をご紹介します。
イチゴ '越後姫'
イチゴは冬から春のジャムの王者です。なかでもおすすめしたいのが、新潟生まれの品種 '越後姫'。果実が柔らかく、色も明るくて美しいです。香りがよいのもうれしいですね。新潟県外への出荷はあまり多くないようですが、もし出会えたら、生でもジャムでもぜひ食べてみてください。
'越後姫'(写真提供/JA全農にいがた)
イチジク 'バナーネ'
冬から春がイチゴなら、初夏から秋のジャムの王者はイチジクです。'バナーネ' は果肉に粘りがあり、甘みが強い品種です。生で食べるのももちろんよいですが、ジャムにすると驚くほどおいしくなりますよ。
'バナーネ'。「ロング・ドゥート」という名前で流通することも。(撮影/田中雅也)
洋ナシ 'ラ・フランス'
冬にぜひ味わってほしいのが洋ナシ 'ラ・フランス'です。苗を園芸店などで見かけることは多くないかもしれませんが、スーパーで果実を見かける機会は多いのではないでしょうか。ジャムにすると、生で食べたときとはまた印象が違って、ほどよい香りや品のよい甘みを楽しむことができます。
'ラ・フランス'(撮影/丸山 滋)
簡単5ステップ! 倉重さん流ジャムのつくり方
最後に、私のジャムのつくり方もお教えします。よかったらご参考になさってください。
①果物の皮をむく(イチゴはそのままでOK!)
②果肉をざく切りにする。あまり細かくせず、果肉感を残すのがポイント。
③果肉の重さの1/2の量の白砂糖を用意し、果肉と一緒に鍋に加えて中火で煮る。
④煮詰めすぎず、果肉が柔らかくなったら、形が残るように軽くマッシャーでつぶす。
⑤レモンのしぼり汁と少量の皮のスライスを加えて火を止めて、完成!
できたジャムは熱いうちに煮沸消毒したビンに入れて、ふたをします。常温になったら、冷蔵庫に入れて保管しましょう。
自分でつくると、やはり市販のもの以上においしく感じます。苗から育てて自宅で収穫した果実なら、また格別かもしれませんね。みなさんも、ぜひご自分でジャムをつくってみてください。
倉重さんの自宅にあった洋ナシとイチゴのジャム。おいしいのはもちろん、驚くほど香りがよかった(試食した編集部員S)。(撮影/田中雅也)
倉重祐二(くらしげ・ゆうじ)
園芸研究家。1961年、横浜市生まれ。千葉大学大学院園芸学研究科修了。日本植物園協会理事。赤城自然園に勤務後、新潟県立植物園園長を務める。専門はツツジ属の栽培保全や系統進化、花き園芸文化史。
(撮影/田中雅也)
『趣味の園芸』連載 「私の植物偏愛記」
本誌で活躍する講師のみなさんに、「愛好家」としてのお話を聞いていきます。「こんな植物が好きだったのか」と意外な側面を発見しつつ、植物に対する熱い思いもたっぷり教えてもらいましょう。
7月号掲載・第4回では、倉重さんに観葉植物についてお話を伺いました。上の写真は、ご自宅のリビングで観葉植物に囲まれながら台湾の高山茶を楽しむ倉重さん。「みんなの趣味の園芸」で募集したみなさんからの観葉植物の写真も、倉重さんのコメントとともにご紹介しています。テキストでご覧ください!
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『趣味の園芸』2024年7月号
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