花の目的は「子孫」を残すこと【花の仕組み】 大人の自由研究スペシャル
暑い戸外での作業は、ひと休みしたくなるこの季節。秋からの園芸作業を、楽しくスムーズに進められるように、この夏は根から花まで「植物の構造」を見つめ直してみませんか? 『趣味の園芸』8月号の注目特集「大人の自由研究スペシャル」より、一部を抜粋して紹介します。
「花」の役割とは?
美しい花は、人間を楽しませるために咲くのではありません。植物の最終目標は、種子を残すことです。
植物(種子植物=タネで子孫をふやす植物)にとってのゴールは、子孫を残すために「種子(タネ)をつくる」こと。つまり、花の仕組み1花は「生殖器官」です。花が目立つ色をして、香りや甘い蜜があるのは、虫や鳥を呼ぶため。生き物などが媒介して、雄蕊(ゆうずい)〈雄しべ〉の花粉にある精細胞が雌蕊(しずい)〈雌しべ〉にある卵細胞と受精して、種子(タネ)ができます。
咲いた花をそのままにしておくとタネができて、タネの充実に養分が使われます。花を長く楽しみたいなら、咲き終えた花は早めに摘むと、植物体の消耗を抑えられます。
花の種類が多いのは「なんで?」
タネでふえる種子植物には、マツやスギ、イチョウなど、胚珠(成長して種子になる部分)がむき出しになった「裸子植物」と、胚珠が子房に包まれた「被子植物」があります。
裸子植物は花弁をもたず、果実もつくりません。一方、被子植物は花が咲き、その多くは昆虫などを呼び寄せて受粉することで果実が実り、その中に種子が胚珠とは、成長して種子となる部分。子房の中で「胎座」と呼ばれる部分とつながって栄養をもらい成長します。この接続部分はいわば「へその緒」。そして種子は「へそ」の周辺部分から発芽します。
被子植物は、昆虫や動物を利用することで飛躍的に繁栄しました。数億年前は生物界の主役だった裸子植物ですが、現在は世界で1000種ほど。一方、被子植物は30万種以上もあります。
濃い色で虫に蜜をアピール
虫が花粉を媒介する花は、蜜のありかを伝えるため、花の中心が虫にとって見えやすい色になっているものがあります。人間の目には見えなくても、昆虫が知覚できる紫外線で撮影すると、蜜のあるところが濃く映ります。
植物の仕組みを知ると、園芸作業の「なんで?」がわかる
草花を愛し、育てている皆さんは、水やりや施肥など、基本的な園芸作業は、すでにご存じの方も多いことでしょう。でも「なんで、そうするの?」と聞かれたら、案外答えに詰まるかも......? 植物の仕組みから、作業の理由を考えてみると、新しい発見や意外な思い違いに、驚くかもしれません。
8月号では「植物は動かないけれど、根を深く伸ばして水を求めたり、太陽のエネルギーを効率よく集めるために葉の配列を工夫したり、虫や鳥などを利用して花粉を運ばせたり、知れば知るほど、驚くような緻密な手段で賢く生き延びています」と語る、農学博士の渡辺均さんに「根・葉・花」の構造や役割を、じっくりていねいに解説していただきました。
教えてくれた人/渡辺 均(わたなべ・ひとし)
千葉大学環境健康フィールド科学センター教授。専門は花き園芸学。薬用植物・健康機能性植物の研究に取り組む一方、ソフトな語り口で難解な理論をわかりやすく説明する講座も大人気。
『趣味の園芸』2024年8月号 大人の自由研究スペシャル 園芸作業の「なんで?」がわかる 植物の仕組み より
▼この号に掲載されています
夏に負けない、最強多肉植物特集! 夏ならではのお世話のポイント、本気のサボテン、自生地の姿をお手本につくる「ハビタットスタイル」、強めのクセがカッコいい個性派ユーフォルビアなどたっぷりと紹介。大好評とじ込み付録「多肉植物・サボテン コレクションカード」も! 注目特集は大人の自由研究スペシャル。この夏は根から花まで「植物の構造」を見つめ直してみませんか? 「グリーンサムへの12か月」ではアクアリウムに挑戦。ガーデナー直伝シリーズも。