佐藤さんが目指す、新しいシュウメイギクとは【趣味の園芸9月号こぼれ話・後編】
『趣味の園芸』2024年9月号の「小さな庭でも宿根草」特集では、育種家の佐藤尚史さんにシュウメイギクの魅力や育て方を教えていただきました。こぼれ話では、誌面で紹介しきれなかったシュウメイギクにまつわるあれこれをご紹介します。前編では、じつはレアだという「ピンクの高性種」について教えていただきました。後編では、佐藤さんが手がけるシュウメイギクの育種について伺います。どうぞお楽しみください!
個性いろいろのシュウメイギク、新しい品種が生まれるまで
編集部(以下、編):テキストでは、佐藤さんが作出した'ももいろブーケ'を紹介していただきました。改めて、どんな品種なのか教えてください!
'ももいろブーケ'(写真提供/佐藤尚史)
佐藤尚史(以下、佐):品種の一番の特徴は、花束のようにまとまって咲く花姿です。'ももいろブーケ'という名前もそこが由来です。実際に株を見ていただくとわかると思うのですが、矮性の普及種である'ハドスペン・アバンダンス'などは少し広がって、ふわっと咲くんです。それが風に揺れる姿は風情がありますが、株姿がまとまりやすい品種もあると喜ぶ方が多いのではと思いました。あと、細い葉も特徴ですね。
編:たしかに、上の写真もブーケみたいです。あと、千重咲きの白花にも驚きました。
千重咲きの白花高性種(写真提供/佐藤尚史)
佐:シュウメイギクはキクではなくアネモネの仲間ですが、この花はキクみたいですよね。タネをまいてみると、シュウメイギクはいろいろな変異が出ておもしろいですよ。下の写真は、白花の八重咲きを選抜している過程で出てきた花です。花弁の枚数や厚み、花の大きさも個体によってけっこうばらつきます。
(写真提供/佐藤尚史)
編:すごい!タネまきしてみたいです!
佐:ぜひ!といいたいところですが、残念ながら難しいと思います。まず、授粉しないと発芽能力のあるタネができる確率が低いです。それと、花後の綿毛を楽しみにされてる方が多いと思いますが、タネをまくときには綿毛とタネを分離したほうが結果がよい気がします。私はそれ用の機械を使っていますが、手作業で分離するのはかなり骨だと思います(笑)
編:あのかわいい綿毛が邪魔に......。たしかに小さなタネを綿毛のなかから取り出すのは大変そうです。潔く諦めます(笑)。
白花の矮性種が登場する日も近い!?
編:もう一つ、「白花があるのは高性種のみ」(9月号p56参照)というのが気になっています。ピンクの矮性品種はいろいろあるのに、白はなぜないのでしょうか。
佐:いろいろな理由が考えられますが、一ついえるのは、白花はピンクに比べると株が暴れやすいからかもしれません。ピンクよりも矮性種を選抜していくのに手間がかかるのはたしかだと思います。
編:白花の矮性種が今後登場することはないのでしょうか。
佐:じつは、今育種していて、かなり進んでいます。下の写真は白八重の矮性種です。いつ世に出せるかはまだわかりませんが、従来の品種に比べるとかなりコンパクトにまとまります。こういうシンプルで飽きのこない花がやっぱりいいですよね。
(写真提供/佐藤尚史)
編:可憐ですね!すでにつくっていたとは......。お店で実物に会える日が楽しみです。
〈終わり〉
▼前編から読む
佐藤尚史(さとう・ひさし)
岐阜県郡上市のナーセリーの2代目。2001年より家業を手伝う形でクリスマスローズとシュウメイギクの生産・育種を開始。自宅の庭には、30年以上咲き続けている白花一重のシュウメイギクがある。手に持っているのはクリスマスローズ。
(撮影/桜野良充)
『趣味の園芸』2024年9月号
小さな庭でも宿根草特集〈うちにぴったり宿根草図鑑〉〈奥行き40cmでOK! 植栽プラン〉〈もっとやさしい宿根草の育て方〉〈シュウメイギク〉〈サルビア〉など。注目特集は秋のタネまき。好きな植物をタネでつなぎ、お気に入りの花を楽しみましょう。自分らしい庭をつくるポイント、夏越しで疲れた草花を秋にもうひと花咲かせる復活術、ボサボサに伸びた生け垣の剪定方法ほか。
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